歌詞考察|松任谷由実「天までとどけ」ユーミンが描く“時間の魔法”の正体

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松任谷由実(ユーミン)の新曲「天までとどけ」は10月9日からスタートしたドラマ「小さい頃は、神様がいて」の主題歌となっています。

この記事では「松任谷由実(ユーミン)」の「天までとどけの歌詞の意味について考察と歌詞に含まれるワードについての豆知識を書いています!

気軽に楽しみながら豆知識を増やしていきましょう〜!

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Sail away みじかい秋のはじめ そして終り
今日だけの陽射し 今日だけの千切れ雲に
ふたりの思いを乗せたなら 天までとどけ

Day by day 気づいたら遠くまで来ていたね
ときに寄り添い ときに離れた 足あと
水彩のように霞んでる渚に残し

時が 全てを書き換えて 美しくするのは
覚えてはおけない辛いこともみんな愛するため

今日だけの笑顔 今日だけの笑い声に
ふたりの月日をかさねたら 天までとどけ

青い空と水平線 眩しくて涙が
あふれてしまうのは そう もっともっと…眩しく思うため

We take this way 貝殻は散らばった写真みたい
拾い集めて 知らず知らずのうちに
ふたりは選んでここに来ていた
今日だけの笑顔 今日だけの笑い声を
汐風運ぶ遥か彼方 天までとどけ

それでは歌詞考察と豆知識を合わせて書いていきます!

秋のはじまりと“短命の季節”が持つ意味

歌詞冒頭のSail away みじかい秋のはじめ そして終り。

わずか数行でユーミンは「始まりと終わりが隣り合う季節」という時間感覚を置いています。
この作品では“今日だけ”という言葉が繰り返されますが、その源流がこの秋の短さにあります。
秋は日本の暦で「移ろい」を象徴する季節で、古来“もののあはれ”の中心とも言われました。
陽射しも雲も今日だけ。
この限定された時間だからこそ、ふたりの思いは濃度を増す。

豆知識専門家
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実は日本の旧暦では秋は「わずか二ヶ月弱」しかなく、春より短い季節とされていました。
特に平安時代の文学では秋は“すぐに過ぎ去る季節”の象徴として繰り返し扱われています。
ユーミンが秋を選んだのは、単に情緒的な季節だからではなく、「俯瞰した時間の短さ」を自然に織り込むためだったと考えられます。
そのため歌詞の「今日だけ」がより強く響くのです。

ユーミン作品に頻出する“絵画の比喩”が示す愛の輪郭

Day by day 気づいたら遠くまで来ていたね。
ここで描かれる足あとが、水彩のように霞んでると続きます。
ユーミンは絵画の比喩をよく使いますが、水彩という選択が重要です。
油絵のように形が固定されず、時間とともに輪郭が淡く溶けてゆく。
つまり「記憶は固まったものではなく、時間によって滲み、柔らかくなる」ということ。

辛いことも含め、時が 全てを書き換えて美しくするのはという歌詞は、記憶の“再編集性”を語っています。
ふたりの過去は一枚の絵ではなく、ひたすら乾き続け、滲み続ける水彩画。
この喩えが、ユーミンの時間哲学そのものなのです。

豆知識専門家
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水彩は英語で「watercolor」。
その語源は“水の色”ですが、ヨーロッパでは18世紀から“旅を記録する手段”として使われてきました。
スケッチのように持ち歩け、瞬間をすくい取るのに向いていたからです。
ユーミンの歌詞は、まさに“旅としてのふたりの時間”を水彩として捉えているのです。
風景も記憶も一瞬で滲む。
だからこそ、足あと=ふたりの軌跡は「柔らかく美しい」ものに変わっていきます。

海と記憶が重なる“日本古来の象徴”と、タイトルの伏線

We take this way と歌詞は進み、貝殻は散らばった写真みたいと言い切ります。
貝殻とは“海の記憶そのもの”です。
一度は海の底にあったものが、波に運ばれ、形を保ちながらもどこか欠けている。
これは“鮮明ではないが確かに残っている記憶”と極めて近い性質です。
知らず知らずのうちに ふたりは選んでここに来ていたという部分は、偶然の積み重ねこそ運命だというユーミンらしい視点。

そしてここで、タイトル「天までとどけ」が回収されます。
貝殻(記憶)を拾い集めることで、今日だけの笑顔・笑い声が重なり、それを汐風運ぶ遥か彼方へ送る。
つまり“今という奇跡の断片”を天まで届くほど遠くへ解き放つ。
タイトルは「今日という日を永遠へ伸ばす」というメッセージだったのです。

豆知識専門家
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古語で“貝”は「替え」に通じ、昔は“交換や縁をつなぐ象徴物”とされていました。
また日本神話では、海は“黄泉(死者の領域)と現世の境界”とされ、記憶や魂の象徴でもあります。
貝殻を写真に喩えるユーミンの比喩は、実は古くからの海=記憶という文化的文脈に根ざしていると考えられるのです。

松任谷由実「天までとどけ」は、単なる恋の歌ではありません。
今日だけの陽射し。
水彩の足あと。
写真のような貝殻。
すべてが「時間は消えるように見えて、実は永遠へ変換される」というテーマにつながっています。
タイトルの天までとどけは、“今日の瞬間を永遠の方向へ押し出す祈り”そのもの。
ユーミンが描く時間の魔法が最も美しく形になった一曲です。

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