歌詞考察|椎名林檎『芒に月』芒(すすき)に込められた日本文化と魂の再生

音楽と豆知識
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この曲はNHK土曜ドラマ「ひとりでしにたい」の主題歌となっています。

この記事では「椎名林檎」の「芒に月(ぼうにつき)」の歌詞の意味について考察と歌詞に含まれるワードについての豆知識を書いています!

気軽に楽しみながら豆知識を増やしていきましょう〜!

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不景気で人々のフラストレーション
脹れ返り破裂寸前
憂うべき世ですしカンバセーション
取り交わして行きたいもんです
いえそう簡単じゃなさそうです
幽霊の正体ご覧になって枯れ薄とは
人間人間双方ぶっ刺し合って
致命傷食らって南無阿弥陀仏

悠然と構えてトランスフォーメーション
延いては誇っている融通性
中年現役選手ロストジェネレーション
ゆえ費用対効果に際し万全
だからもう勘繰っていらっしゃいますな
他意なんて皆無で一生懸命
枯れ薄と言う人間人間
愛そうと愛したいと列島行脚参拝だ

体 頭 諌め合ってる
僕は 僕を 疑いたがる
魂よ 応答せよ 歌えよ
連れ去りたもれ
いずこへなりと

海の深く 包まって
過去に口付けた矢先
未来への門が開いた
今を突き刺す両足踏ん張って立ち上がれ
ああ いよいよ勝ち取ったんだ
僕は僕の信頼を

土砂降りの雨
脚を取られる
敢えて濡てば
敢えて委ねて
裸足で走れ
流されるまま
息急き切って さあ彼方へ

野を越えよう 山を潜って行こう
振り仰ごう 空をも分かち合おう
解き放とう 風を掴み取って行こう
打ち鳴らそう たった一つの心の臓

遠くまで来た
あなたを臨む夜が満ちていた
弥栄よ祝うよ

※歌詞は現時点で判明している部分を耳コピしたものになります。

幽霊の正体ご覧になって枯れ薄とは――“芒”に宿るもの

この一節は、間違いなく本作の核となる一文です。
「幽霊の正体ご覧になって枯れ薄とは」とは、何を意味しているのでしょうか?

まず「枯れ薄」とは、秋に枯れたススキのこと。
このフレーズは、江戸時代の儒者・荻生徂徠(おぎゅう そらい)に由来する古い言い回しに通じています。

豆知識会話①:芒=幽霊の正体!?

豆知識専門家
豆知識専門家

「ねえ、“幽霊の正体見たり枯れ尾花”ってことわざ、聞いたことある?」

生徒
生徒

「なんか聞き覚えあるけど、意味までは知らないかも」

豆知識専門家
豆知識専門家

「あれ、昔の人がススキを幽霊と見間違えたって話が元ネタなんだよ。尾花=ススキっていう秋の季語でもあるの」

生徒
生徒

「えー!それが『芒(すすき)』って漢字にも通じるんだ?でもなんで見間違えるの?」

豆知識専門家
豆知識専門家

「夜風で揺れるススキの穂が、まるで白装束を着た幽霊のように見えるかららしいよ」

生徒
生徒

「日本人の想像力、豊かすぎない?」

豆知識専門家
豆知識専門家

「ほんとにね。でもそれが、この曲のタイトル『芒に月』にも通じてくるんだよ」

ここで重要なのは、「幽霊の正体=ススキ(=人の想念)」という視点。
つまり私たちは、勝手に恐れて、勝手に傷ついていることが多い。
“人間人間双方ぶっ刺し合って”というフレーズが、そうした内面の葛藤やすれ違いを象徴しています。

トランスフォーメーションする“僕”とロストジェネレーションの希望

次に注目したいのはこのフレーズ:

「悠然と構えてトランスフォーメーション
延いては誇っている融通性
中年現役選手ロストジェネレーション」

「ロストジェネレーション」とは、日本では1990年代の就職氷河期世代を指すことが多い言葉です。
社会に適応できない“失われた世代”という烙印が押されがちな彼らですが、この曲では“現役選手”として、再起への意志を語っています。

豆知識会話②:ロストジェネレーションの語源って?

豆知識専門家
豆知識専門家

「ロストジェネレーションって言葉、もともと日本発じゃないって知ってた?」

生徒
生徒

「え、そうなの?就職氷河期世代の話じゃないの?」

豆知識専門家
豆知識専門家

「もとは第一次世界大戦後のアメリカで、作家ヘミングウェイたちの世代を指してたんだよ」

生徒
生徒

「戦争のあとで価値観が壊れた人たちってこと?」

豆知識専門家
豆知識専門家

「そう。目的も希望も見失ってる世代って意味で、それを日本では就職難の世代にあてはめたんだね」

生徒
生徒

「なるほど…それでも“現役選手”って呼ぶのがグッとくるね」

豆知識専門家
豆知識専門家

「そう。つまり“まだ終わってない”、ってこの曲は言ってるんだよ」

「融通性」「一生懸命」といった言葉が並ぶ中で、歌詞の語り手は「愛そうと愛したい」と繰り返し、誰かとの共生や赦しを願っています。
“変身=トランスフォーメーション”は、諦めではなく、成熟へのプロセスなんですね。

魂よ応答せよ――信頼を勝ち取る「芒に月」の夜

クライマックスで繰り返されるのは「魂」「応答」「信頼」という内面的な言葉。
これは外の世界ではなく、自分自身との対話を意味していると考えられます。

豆知識会話③:タイトル『芒に月』の文学的背景

豆知識専門家
豆知識専門家

「『芒に月』って、なんか古典的な響きがしない?」

生徒
生徒

「確かに。でも“芒(すすき)に月”って何か元ネタあるの?」

豆知識専門家
豆知識専門家

「実はね、これは“秋の情景”を象徴する典型的な組み合わせで、万葉集や俳句にもよく出てくるんだ」

生徒
生徒

「へえ!風景っていうより、心情を映してるんだね」

豆知識専門家
豆知識専門家

「うん。“儚さ”とか“寂しさ”とセットで、“芒に月”は“過ぎゆくもの”の象徴になることが多い」

生徒
生徒

「じゃあこの曲、見た目は静かだけど、内側はすごく熱いんだ…」

豆知識専門家
豆知識専門家

「その通り。魂を呼び起こすような歌詞なんだよ」

「僕は僕の信頼を」――この一文は、誰かからの承認を求めるのではなく、自分自身を取り戻す叫び。
それはまさに、芒のように揺れながらも、夜空の月のように静かに輝こうとする姿なのです。

『芒に月』は、日本的な情緒と現代社会の葛藤を、美しく重ね合わせた作品です。
「幽霊の正体はススキだった」――その古典的表現に込められた意味は、恐れも怒りも、実は自分自身の中にあるということ。
そしてそれを見つめ直すことで、「僕は僕を信頼」できるようになっていくのです。

秋の月に照らされた芒のように、揺れながらも立ち続ける私たちへ。
この歌は、“変化すること”を恐れず、自分と向き合う強さを与えてくれるのではないでしょうか。

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